貴方はまだ眠っていた。今日も、おやすみと言うことはできないまま、私は眠りに落ちてしまっていたようだった。
隣で眠る貴方は未だ目を醒ます気配が無い。何時だろう、と気になった私は体を起こそうとしてふと、左手に触れる違和感に気付いた。自分のものでも無機質なものでもない生きた、生を感じさせる、感触。掌に重ねられていたのは、眠る仁王くんの掌だ。
軽く重ねられただけのそれ。
だけれども、とても重く、そして優しく、温かかった。
溜息を吐く。寒さにぶるりと裸のままの肩を震わせシーツを被ってみても、瞼を閉じてみても、眠気は襲ってこなかった。重なっただけの手が、やおら主張するのは貴方と云う存在そのものだった。眠れない。どうやらすっかり眠気は飛んでしまったようだった。
瞼を閉じれば世界は暗黒に包まれた。
そして一層顕著になる五感。
暗闇の中で、考える。一人になってしまった時のことを。もしもこの手が無くなってしまったなら、私はどうするのだろう、と。
けれど答えは出なかった。ただ分かっているのは、仁王くんと私は違う人間で、ずっと一緒にいられる訳では無いと云うこと。いつまでもは無いのだと云うこと。それは当然のことだった。しかし喪失の日を、私は上手く想像することができなかった。
重なった掌は、いつか離れてしまう、なんて。
私はシーツを頭から被ってみた。そうすれば少しはこの鬱陶しい思考も払われるかと思ったのだ。けれどそれは失敗に終わってしまう。繋いだ手と手。左手から伝う体温が、彼の静かな寝息が、世界を支配していた。
私はシーツから顔を出してみた。そして眼にしたのは、夜明け間近の薄日だ。穏やか過ぎる、光だった。
カーテンの隙間から差し込む緩やかな光が美しくて、私は少し、泣いた。
夜のカーテン
08.01.19 H