時計の音がカチカチカチカチ煩い。ついでにゲームの音もピコピコピコピコ煩い。何で俺はさっきから床に座ってベッドに背中預けて、じいっと恋人の横顔を眺めてるんやろう。今日は財前の家が誰も居らんから二人で遊ぼうやって話をしてた筈や。この状況は明らかにおかしい。
 俺の刺々しい視線を受けてる当の本人は、家に着くなり昨日発売やったらしいゲームに夢中でこっちを向こうともせん。最初はいつも通りの位置に座った俺の隣指差して、『隣、座ってええですか』とか可愛え事言うてたのに。座るなりゲーム機取り出して、頭撫でてても俺が何してても顔上げへんし。

「なァ、ざいぜーん」
「んー?」

 ああ、これや。これ。この生返事。ほんまに聞いてるんか不安になるような返事。さっきから呼び掛けてもこの調子で、財前クンはさっぱり動いてくれへんのや。あーあー拗ねんで、ほんま。

「聞いてる?」
「聞こえてますよ」
「……財前」

 一瞬滲んだ声に、ついに財前が顔上げた。寄せられてる眉は気になる所やけど、そんなん構ってられるかい。そのまま顎先捉えて強引にキスしたったら財前は、ん、とか小さい、くぐもった声を漏らす。あ、ヤバい。
 ゲームの音は鳴り止まへんけど、財前の視線はこっち向いてる。絡めた舌から水音が響いて、段々遠ざかる、他の音。頭の後ろに手を差し込んで深く深く、貪る。唇を舐めて離れた時には、すっかり息も上がっとった。財前の顔も、赤い。ゆっくり手のひらで頬を撫でたら、熱くて。
 思わずもう一度、と顔を寄せた俺を待ってたんは、熱い手のひらの洗礼。真正面から手のひらに顔を覆われて、視界が暗くなる。勿論俺の視界奪ってるんは財前の手のひらな訳なんやけどな。くそ、何やねん。

「ちょい待って、謙也先輩。ここクリアしてから、な」

 手のひらを外して、赤い顔のまま悪戯に笑みを浮かべてちゅ、と口付けて俺の肩に頭を預けた愛しの恋人の視線は再びゲームの液晶へ。これで肩落とさん男が居ったらみてみたいっちゅー話や。





構ってマイハニー

09.07.17 H