※性描写が含まれます。18歳未満の方は閲覧をご遠慮下さい。露骨な言葉も出てくるので苦手な方もご注意。身も心も18歳以上の方はスクロール。























 触れたところが熱くて、溶けてしまいそうだった。
 は、と浅い呼気が漏れる。中途半端に肩まで捲り上げられたシャツが喉元に溜まってべたついた汗が、少し気持ち悪い。ぴちゃりと濡れた音が鼓膜を震わせてきつく瞼を閉じると、濡れた下が胸元をつと辿り身体が跳ねる。謙也は一瞬胸元から顔を上げてぺろりと舌を出して自らの唇を舐めるけれど、再び反応する肢体を抑え付けるように唾液に塗れて濡れそぼった乳首に舌を這わせた。

「っ、…あ、も…そこ、や」
「んー?気持ちよさそう、やのに」

 謙也が乳首を口に含んだまま喋るものだから、歯が当たって。財前は高い声が漏れてしまいそうな口を、唇を噛んで手のひらで覆って、蓋をした。先程から同じ箇所ばかりを責め立てられて、本当に頭がどうにかなってしまいそうだ。もしかしたらどうにかなってしまった方が、楽なのかもしれない、けれど財前の唾液に塗れて腫れ上がった乳首をちゅうと吸って唇を離して口元を拭うこの人は、それを許してくれない。
 ひどい責苦だ。耐えられるはずがない。下半身にはとっくに熱が集まって、張り詰めているのに。財前はもどかしさに腰を揺する。きし、とベッドが鳴った。ベルトはとうに外されてシーツの中に埋もれている。ズボンは半端に脱がされて、足元で蟠っているから動きにくい。対して謙也は未だ涼しい顔だ。上着は脱いでいるから、上半身は裸だけれど。いいように翻弄されている現実を知らしめられているようで、悔しくて。財前は眼前で口端を擡げる謙也を睨め付ける。
 視線を奪うように髪が触れて口付けが降る。息をするように薄く開いていた唇を舐めてそのまま舌を捻じ込んで、絡め取られて吸い上げられる。粘膜同士が擦れ合う、音。くちゅりと絡まる唾液はもうどちらのものかも分からない。息苦しくてん、ん、と喉を鳴らすと謙也の長い指が、胸元から臍、脇腹へと辿って下着の上から財前の性器に触れた。親指で優しく、撫でるように先端を弄られるとどうしようもなく腰が跳ねる。舌を根元から吸い上げられて離れる唇。だらしなく開きつうと伝う唾液を謙也の指が伝う。人差し指と中指を咥内へと入れ、舌や上顎を擽るようになぞる。財前は眉を寄せて瞼を薄っすらと開けたまま、侵入する指に舌を絡めた。

「ん、む…ン」
「ええ子。ちゃんと舐めてや」

 呼吸が困難で、頭がぼうっとする。両手を手首に添えて、指の付け根から先までを辿ってみたり、隙間に舌を這わせると謙也が小さく眉を寄せて声を堪えるものだから、嬉しくて財前は指先に軽く歯を立ててみた。もうええよ、と耳元で囁かれて額に口付けが降る。舌を出して手を離せば、物足りなさそうに開いた口にも触れるだけの、啄ばむような優しいキスで、溶けてしまうかと思った。下着をずらされて、ズボンも足から取り払われてしまった。晒される素肌に、露わになる勃起した性器に、直視できず顔を背ける。唾液に濡れた指が、前から後ろへと伝い緩く後孔へと触れた。意思を無視してひくりと収縮するそこは、幾度かのセックスで教え込まれていたこれから与えられる快楽を知っている。
 人差し指が一本、ゆっくりと侵入する。何度しても、この瞬間の違和感と嫌悪感は、晴れない。ぐ、と身体の内に何かが入り込む感覚。内壁を擦り広げるように入り口付近で指を折り曲げて襞を解す指に、痛みより違和感が勝る。いつの間にかもう一本増やされていた指が、後孔から緩く抜き差しされる。ずぶりと侵入した指に奥の方の、しこりを擦られて財前は仰け反った。

「ここ、やっけ」
「っあ、あ、や…おかし、なる」
「おかしなったらええねん。…声、出しィ」

 断続的に吐き出される悲鳴にも似た嬌声は己のものとは思えなくて、財前は遠退く思考の片隅で、己を苛みながら薄っすらと笑みを浮かべている謙也の姿をぼんやりと眺める。普段はこんな人じゃない。けれど時々、セックスの時の謙也はひどく意地悪くなる。舌なめずりをして後孔を弄っていた指を抜いた。物足りなさにひくつく後孔はどうにも出来なくて、せめて悟られないようにと寄せようとした足を制止されたまま、謙也がカチャカチャとベルトを外す音が響く。僅かに身体が離れたその隙間で財前は呼吸する。重い、熱い。熱い。

「足、ちゃんと開き?欲しいやろ」

 ゆっくりと頭を撫でられて双眸が眇められる。謙也は相変わらず優しい声で、財前に語りかける。言う通りにしなければ恐らくは十分でも二十分でも彼は放置するだろう。スイッチが入ってしまった時の謙也は、ひどく冷静で冷徹で、意地が悪い。財前は視界を閉ざして、顔を背けて、力の入らない腕を持ち上げてゆっくりと両足を広げた。後ろまで見える、ように。謙也の視線が下半身に注ぐ。耐えられない羞恥心に、溶けてしまいそうだった。ひくつく性器と、後孔はもう限界だ。

「……ッ、いれ、て」

 小さな声で呟けば、よく出来ました、と言った謙也が軽く自分の性器を擦って後孔に押し当てる。熱いものが、触れる感覚に疼く内壁が、善導して入り口がひくりと蠢く。
 頭がくらくらとして、本当に溶けてしまいそうだった。押し入る熱が、身体を割り開く熱が、財前の思考を塗り潰していく。口からはただ、零れる唾液と甘い、声。ゆっくりと財前を撫でる手が、汗で張り付いた髪を払い額に口付ける。そんな行為とは裏腹に内壁は謙也の性器で埋められている。ぎりぎりまで引かれて、最奥まで突き入れられて、もう、どろどろだった。

「謙也、せんぱ、」
「財前、……好き、やで」

 甘く囁かれて耳朶を噛まれる。ピアスを舐めるのは、謙也のクセだった。耳からも犯されて、全身でどこも謙也が触れていない場所は無いかのようだった。
 知らない。こんなのは、知らない。





炉心融解

09.05.27 H