本当は気付いていた。気付いていて気付かないふりをしていた。
決定的な終わりなど、知りたくもなかったからだ。俺はずるい。
「なあ、光」
困った顔でわらう、謙也さんを見ることが出来なくて顔を伏せた。膝に額を押しつけてやり過ごす。さざ波のように、寄せては返すこのおもいを。どこにも行き場など無い、この、おもいを。
「けんや、さん」
一年前の同じ日は、生憎の天気で見えなかった星空。今日は新月で月の影響も受けない。きっときれいに見えるだろうと言って、俺をここへつれてきたのは、謙也さんだ。
けれど俺はうつむいているから、もちろん星なんて見えるはずもなかった。だって結局見えたところで、願いなど叶うはずもないことを、俺は知っていた。解っていた。
「ごめんな」
謝らないでほしい。
分かり切った結末で、最初から予感はあったのだ。いつか謙也さんの隣にはかわいらしい女の子がいて、俺に笑って紹介してくれる、彼女はちょっと恥ずかしそうに、こんにちはと言いながら。俺は謙也さんのくせに何でこんなええ人捕まえたんですか、とかからかって。
最初はそんな関係を描いていたはずだったのに、優しくてへたれな先輩と、生意気な後輩だったのに、どこで間違えてしまったのだろう。
募るばかりのおもい。胸中に去来するのは、痛みと悲しみと、僅かな安堵。
これで解放してあげられる。もう、ここはおれの居場所では、ない。
「俺、帰ります」
「ひか、」
立ち上がり、暗い、暗い夜空を見上げてみれば皮肉なことにあの時はいくら探しても見つからなかった流れ星が一つ。
「ばいばい、謙也先輩」
何か言いたそうに口を開いた謙也さんを見ないふりをして、伸ばされた手を置き去りにして、俺は踵を返した。
二つ目の流れ星は、空が滲んでみえなかった。
オリオンは沈んで
09.10.20 H